メディア・広告手法の紹介

次に、主要な広告メディアの紹介を私の独断と偏見からのコメントと共にしたいと思う。あくまで参考程度の情報として使っていただきたい。

Google

パフォーマンス広告という分野を作り出し、Globalで圧倒的なトラフィックのコントロール力を持ち、今なお進化を続けているという意味で、やはりこの業界のKingであるのは間違いない。怖くて計算したこともないし、今後もするつもりもないが、2002年以来自分の部署や会社でGoogleへいくら広告費を支払ったかを考えるとちょっと怖くなる規模である(数百億円の後半には確実になる。。。)。

Googleはブラウザ系の広告メニューとアプリインストール系の広告メニューで構成がだいぶ異なり、私の場合は3年以上アプリ系は深く関わっていないので、前提はブラウザ系のメニューを中心にコメントする。

リスティング広告

私のこれまでの経験から、Googleが様々なメディアを持ちつつも、広告のターゲティング精度で圧倒的な差別化を実現できている背景には、リスティング広告を持っていることが一番の要因であると思っている。ChatGPTが検索系のトラフィックを大幅に奪うなどの業界地図の変更が起こりでもしない限り、もうしばらく現状の優位性は続きそうである。

リスティング広告はの最大の特徴はターゲティングを細かく設定できることである。ターゲティング精度の高いセグメント(例えば、看護師の例で活用した 「看護師 転職 東京」のような)で獲得したユーザーは獲得後の転換率も非常に高い傾向が強いため、他の媒体よりも高いCPAを設定して獲得することも多い。

一方で、精度高く運用してパフォーマンスを最大限発揮しようと思うと高い運用スキルを要求される。このため、私はリスティング広告を精度高く運用することが出来るかどうかで、メンバーやその会社のパフォーマンスマーケティングの運用スキルのレベル感を判定する材料としている。

私の過去経験では、パフォーマンスマーケティング系の広告予算はリスティング広告中心に配分することが多く、例えばリスティング広告で広告予算をすべて消化することが可能な場合などは、100%近くリスティングで予算を使ってしまうようなケースも珍しくない。

ディスプレイ広告(GDN、SDC、Find等)

イメージとしては、リスティングとYoutube以外のGoogleの保有する広告面をネットワーク化して、Googleの内外に幅広くバナー広告を配信する商品群であると理解して問題ない。その中でGoogle保有サービス面に限定して配信したり、外部媒体を中心に配信したりなど、メニューの違いはあるが、その辺はGoogle社のサイトなどを確認してもらいたい。

基本的にターゲティング設定以外は細かな運用レバーはなく、AIの最適化が上手くいくのを祈る感じのメニューである。印象としては、いい時と悪い時の差が激しく、安定性にかける印象が強い。このため、余り予算配分を大きくしすぎると、いきなりアカウント全体のパフォーマンスがGoogleのディスプレイ系の広告に引っ張られて良くなったり、悪くなったり変動するので、注意が必要である。

Youtube

動画系のクリエイティブを回す媒体としては圧倒的なトラフィックを持っているメディアである。最近ではコネクテッドTVといわれるインターネットに接続されたTV画面でYoutubeをみる人も確実に増えており、以前のようにスマホで見られる動画メディアという位置づけからもここ数年で相当変わってきている印象である。

最近ではYoutubeを使ったパフォーマンス系の広告メニューも登場しているが、リスティング広告と比較してもパフォーマンスを維持して活用出来る予算額は限られており、別途議論するFull Funnel系の施策の活用メディアとして最も有効である。

アプリキャンペーン・P-Max

最近のGoogleのトレンドの商品で、AI任せで広告主は細かい運用は考えなくても良いですよという感じのメニューである。上記3つの広告メニューすべてにおいて、AIがクリエイティブ、ターゲティング、予算配分などを自動的に判定して運用をしてくれる感じである。つまり、一つ一つのメニューについて細かい運用を広告主がする必要がない(または、出来ない)。

私の理解では、Googleは、パフォーマンスマーケティングをスキルのない人でもお手軽に広告出稿が出来る正解を目指しており、その主力となる商品である。このため、Googleが現状メインで推進しようとしている商品ラインであると理解している。

しかし、ここまでで議論してきた通り、人間が精緻にPDCAを回して運用しているアカウントと比較してAIお任せの運用の方が良くなるケースはまだ稀な印象は正直ある。

その意味では、まだ初心者向け、リスティング等の補完目的の商品であると考えている。現時点では、本商品を運用するだけで業界最高レベルのマーケティングチームを作るというのは厳しいと思う。

Yhaoo!

基本的にはGoogle同様にリスティング広告中心のメディアであるという位置づけ。YahooとLineの合併により将来的にもう少し状況は変わるのかもしれないが、少なくても2024年時点ではその印象に変わりはない。

リスティング広告については、トラフィックはGoogleにかなわないが、商品の特性上高いターゲティングの精度を実現することは可能な認識で、Googleで予算が使いきれない場合優先して検討してもよい媒体である。

YDN等のディスプレイ系のメニューについてもGoogleのディスプレイ系のメニューと似たような印象であるが、申し訳ないが存在感は薄いと言わざるを得ない。

Meta

FacebookとInstagramが2大メディアとなるが、広告運用上はこの2つのメディアを分けて議論をすることは少ない。もちろんインフルエンサーマーケティングなどの文脈では、圧倒的にInstagramが優勢であるが。

Meta系の媒体の利点はGoogleについでトラフィック量を持っているため、ある程度規模の大きな予算の消化が見込める点と、AI技術が日系メディアとの相対比較で高そうに見える点である。一方で問題点は、リスティング広告と比較するとどうしてもターゲティングの精度に限界があると言わざるを得ないということである。リスティング広告は、ユーザーが特定のキーワードで検索したというドンピシャのタイミングでタッチポイントを作れるが、MetaをはじめとするSNS系の媒体は、おそらくユーザーのターゲティングはそれほど精度が低いわけではないのだと思うが、タッチポイントとして広告を表示するタイミングのコントロールがほぼ不可能な印象で、その差において広告のクリック率やクリック後の転換率に差が出てきてしまう。また、プロアクティブなリスティングに対して、どうしてもパッシブな広告配信になるため、ユーザー獲得後の利用意向も相対的に低くならざるを得ない。但し、リスティングはプロアクティブに行動するレベルの熱量のユーザーにしかアクセスできないのに対して、Metaで大きな予算を使えれば、リスティングではアクセスできないユーザー層にアクセス出来る可能性もあり、その意味では利用価値の高い媒体であるといえる。

注意点は、顧客獲得後の転換率をきちんとトラッキングして、適切な新規獲得CPAの設定を行うことである。

Line

パフォーマンス広告の特徴としてはほぼMetaと変わりがない。異なる点としては、おそらくユーザーの構成なのではないだろうか?コミュニケーションツールとしてのLineの日本国内での普及率は圧倒的で、老若男女使っていない人はほぼいないのではないかという印象である。このため広告配信をしていても、比較的年齢層が高めのユーザーが取りやすい傾向にある。自分も50歳にそろそろなるので、余り言いたくはないが、印象として年齢層が高めのユーザーというのは広告慣していないケースが多いのか、若年層ユーザーに比べてCTRが高い印象で、そうすると自然と高年齢層に広告配信セグメントがよっていってしまうことが多い気がしている。これは、Lineが広いユーザー層を抱えているから起こる現象な気もするので、広告主としては、Metaと同様の使い方をしつつ、特に他のGlobalメディアではアクセスできないユーザー向けのタッチポイントとして利用することは有効な気がする。

アフィリエイト

アフィリエイトというのは、具体的なメディアではなく、広告手法の名称である。世の中にあるWebサイト向けに固定広告単価を設定して、獲得一件につき〇〇円とか、購入金額の〇%などのようにして、ユーザートラフィックを流してくれた媒体に手数料を支払うモデルである。代表的な例としては、クレジットカードの比較サイトとか、カードローンの比較サイトのような媒体はアフィリエイトサイトとして収益を得ている場合も多い(ちなみに23年の景表法の改正で、アフィリエイトサイトのステルスマーケティングの規制が厳しくなったので、アフィリエイト広告を表示している比較サイトにはどこかにその旨が表記されている)。

アフィリエイト広告の広告主としての利点は主に3つである。ひとつは固定単価性であることが殆どなので、広告運用上の新規獲得CPAの変動を抑えられることにある。一般的にアフィリエイト媒体側は広告でトラフィックを買っていることが多いため、パフォーマンス広告の運用リスクをアフィリエイトサイトが持つ代わりに自社で広告運用するよりもCPAの固定額を多少割高にすることも多い。2つ目の利点は、各サイトのトラフィック量は基本的には媒体力に応じて極端に変動することが少ないため、一定量のトラフィックを安定して確保することがしやすいことである。3点目は、ステルスマーケティング規制が強まり若干効果は薄れつつあるかもしれないが、比較サイトをはじめ第3者目線で商品、サービスの説明をしてくれているコンテンツであるため1人称で配信される通常の広告よりも新規ユーザー獲得後の購入転換率が高い傾向にあることである。

アフィリエイト広告の上記で示した3つの利点はパフォーマンスマーケティング担当者としては、非常に有用性が高いため、アフィリエイトの手法が盛んな商品、サービスなどでは、広告とは別の激しい単価のつり上げ競争になる場合がある。アフィリエイト媒体側は基本的には自社の広告収益を最大化することが目的であるため、成果単価を高くする、サイト上での広告クリックからの転換率を高くするなどの改善を図ってより目立つ場所に自社の広告を表示するように交渉するということが主な改善手法である。

アフィリエイト広告には大手デジタル系の広告代理店以外にも専門代理店がいくつか存在するのと、アフィリエイトサイトを束ねるASPと呼ばれる事業者が存在するので、興味がある方は相談してみてもよいかもしれない。