データ集計を自動化するBIツール
DWHが出来て、データ入力・収集ツールの整備が出来た。でも、データドリブン経営・マーケティングを実現するための最後のツールがまだかけている。それはBIツールである。代表的な商品はTableauというSalesforce傘下の商品である。BIツールとは、帳票を設定することで、自動でDWH等と連携してデータ集計表の作成やグラフの作成、既存の帳票上でのソート・フィルタリング、クロス集計など実施などが出来るツールである。基本的には、BIツールがなければ多くの場合エクセルで同様な作業は可能なことが多いが、DWHとの連携による帳票の自動Updateや、SQLを活用したエクセルでは出来ないような大規模なデータ集計や複雑な集計などが出来るため、上位互換的な位置づけにあると考えてもらえると良いと思う。
別にBIツールの営業をしたいわけではないので、絶対に導入すべきだとまでは言わないが、私の経験上、導入のメリットと導入しない場合に起こりがちなデメリットをここでは紹介したい。
まず思いつくのメリットは、データ集計のリソースが大幅に削減可能になることである。KPIの帳票などをエクセル管理していると、日次、週次、月次などで、データを集めて、Update、集計などを定期的に行わなければいけないというような作業が発生する。一方BIツールの場合は、DWH上に必要なデータがバッチ処理などで自動連係されるようになっていれば、一度作った帳票は改修しない限り、ほぼ自動的に集計、グラフ化などを行ってくれる。このため、貴重なデータ分析リソースのルーチン業務を大幅に削減することが可能になる。
エクセルで限界までデータ集計を頑張ってみる!
もちろん、このリソースの削減もメリットとしては小さくはない。しかし私が考えるBIツールの最大のメリットは、データ分析の基本フレームワークの構築と、メンバー間の共有・利活用が劇的に加速されるということである。この点を理解するためには、BIツールがない場合との比較で考えてみたい。
例として再び人材紹介業の例で話をしよう。チームが担う役割は新規顧客獲得の獲得で、デジタル広告の運用チームとし、KPIはこれまで登録数最大化であったが、この度求人提案数の最大化に変更するというプロジェクトにしよう。このような全手にたって、この広告運用チームが、どのように施策を進めていくのかを具体的に考えていくことにする。
求人提案数と登録数の関係を式で表すと、
求人提案数 = 登録数 × 求人提案転換率
となる。このため、求人提案数を最大化するために最初に考えるべきは、登録数と求人提案率のコントロールである。これを一番簡単に行えそうなのは、投資する広告媒体ごとの予算配分を変えることであるため、広告媒体ごとの数値を集計して、求人提案CPAが安い媒体の予算を増やし、求人提案CPAが高い媒体の予算を減らすというのを基本ルールとして、オペレーションを構築する方針としよう。そのために、これらの数値が纏まった帳票を職種毎に作成することにする。
このくらいの話は、チームで一つのエクセルを作れば済むことなので、はっきり言ってわざわざBIツールを使わなくてもエクセルで対して状況は変わらない。
そのうち、週次でMTGをしていると、どうも求人提案への転換には2週間程度リードタイムがかかるので、今週獲得したユーザーの転換率が良いのかどうかが分からず、週次でのPDCAが回しにくいという話がチーム内で出てきた。その解決策として出てきたのは、求人提案の一つ前のヒアリング数を先行指標として、確認したら良いのではという話がチーム内で出てきた。それはよさそうだということで、ヒアリング数とヒアリングCPA、ヒアリング転換率を帳票に追加して、毎週報告することにする。私の感覚では、この段階もエクセルで全く問題ない。
ところが、ある職種の担当者が、特定の媒体の求人転換率が今まで良かったのに急速に悪くなった。だが理由が分からないと言い出す。データ分析チームと検証した結果、どうも求人転換率が低い60歳以上の求職者の比率がその媒体だけ急速に上がっているようだということが分かった。そこで、今後は、特定の媒体の転換率が悪くなった時は、求職者の年齢分布をチェックすることにしようとなる。このあたりからエクセルでやるのと、BIツールでやるのとで実は差が出てくる。
エクセルでこれをやろうとすると、方法はおそらく2つある。データ分析チームが、広告運用担当者が媒体ごとの年齢分布を調べたいときにいつでも見られるように、毎週データをDWHから吐き出して、エクセルにストックしておき、聞かれたらデータのありかを教えてあげるという方法。または、広告運用担当者から依頼されるごとにデータを集計して渡してやるという方法である。前者の問題は、使われるかどうかも分からない情報をいちいちデータ分析チームがもしものために作るという非常に無駄な作業が発生する。後者の場合は、依頼されてから動くのでスピードが遅いのと、無駄な手間を掛けさせると申し訳ないので、そもそも依頼することに遠慮が発生し、気軽に分析が出来なくなる。一方BIツールがあれば、年齢分布を見ましょうとなれば、媒体ごとの年齢分布の帳票を一度作ってしまえば、いつでも誰でも見られるようになる。
ここでは、年齢分布を見ましょうと1項目追加された程度なので、まだエクセルでも問題ないが、一つのチームで何年も毎週PDCAを繰り返すと、この時はこのデータを見る、このパターンはこのデータとナレッジが蓄積され、その項目数は10、20と増えていくものである。こうなってくるとそもそもオペレーションが大きな負荷になり、運用が回らなくなるか、データ分析チームがオペレーションで手一杯になってしまう。
BIツールは現場メンバーの一人一人のデータドリブン実践の場
私の考えるデータドリブンなデジタルマーケティングのチームというのは、日々のPDCAを回しながら、常に新しい分析のアイディアを考え、それをチーム内で共有し、それが汎用的なアイディアであれば、チームのナレッジとして一般化仕組化するというプロセスを繰り返すことが重要であるが、その実践場所がBIツールであると考えている。
このプロセスを、データ分析チームの手を介さず、現場の一人一人のメンバーが実践できる環境を如何に提供するかが、PDCAのスピードをあげる非常に重要な要素になる。そして、それを実現するために重要な条件が、現場のメンバーが簡単にデータにアクセスでき、利用可能な環境になっているということなのである。
もちろん、エクセルでそのオペレーションを回すことも可能ではある。しかし、オペレーション負荷が高くなると、可能性の高いアイディアしか分析、検証されなくなってしまいがちである。それはつまり小さな失敗がしにくい環境になってしまう訳だ。分析にも、小さく、早く、意図を持っては重要なわけだ。もし、自分のチームでデータ分析のスピードが遅いと感じることがあったら、一度自分のチームのメンバーのデータアクセスの状況を確認してみてはいかがだろうか?データ分析チームに分析ではなく、過剰なオペレーションをさせていないだろうか?もしそんな問題が発見されたら、BIツールの導入を検討しても良いのかもしれない。
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