良いマーケターに選んでもらえる職場作り2

マーケティング部門のみで行える採用力強化

前回は、良い人材を採用するために企業として評価されるポイントを纏めてみたが、その項目はその企業全体の在り方や企業カルチャーや事業戦略と密接に関わっているため、残念ながらマーケティング部門の責任者レイヤーでは、改善、変更出来ないような項目が多くなってしまう。

しかし、もしそうであったとしても、マーケティング部門のマネジメントチームは自チームによい人材を採用出来ないと諦めてしまう必要は必ずしもないと思う。

事実、私自身が普通の人が敬遠しがちな形が整っていない発展途上の組織や、改善が必要な組織での仕事に魅力を感じて飛び込んでしまうという性分であることに起因するのかもしれないが、大きな声では言えないが、これまで働いてきた会社が転職市場で会社としての採用ポテンシャルが高く、良い人材が会社の名前だけでたくさん集められるという環境になかったことが多い。つまり、会社名に胡坐をかいて良い人材を楽しく選ぶという恵まれた経験をしたことがない。一方で、マーケティング部門をしばらくマネジメントしてマーケティング施策のレベルが上がり、人材の育成も進んでくると、新規で採用したい人材に求めるスキル・経験・ポテンシャルのレベルも上がってこざるを得ない。そうすると、企業の採用ポテンシャルを越えて良い人材を何とか集めなければいけないということを常に考えざるを得ない状況で組織作りをしなければいけないことが多かったということだ。

そのために必要な事は、一言でいうと「自己のマネジメントするマーケティング組織の魅力」を可能な限り高めることであると思う。一言でいえば、マーケターが働きやすく、レベルの高いマーケティングを行い、さらにその組織に所属することでマーケター個人として成長できるような組織を作るということである。

具体的にどうすればその様な組織になるかという点については、レベルの高いマーケティングをするという事でいえば、このBlogで議論してきたことを可能な限り漏れなく実践してくださいというのが答えになるので当然一朝一夕にはいかない。マーケターが働きやすい環境については後述したい。そしてマーケターが成長できる環境というのはまだお読みでない方はこちらをじっくり読んでいただき、実践していただければと思う。

と、魅力的なマーケティング組織を作る方法というのは採用パートで簡単で説明出来る話ではないので、ここでは述べないが、今回は、以下の2点について話をしてみたい。

  • マーケターが働きやすい環境とは?
  • マーケティング部署のマーケティング

マーケターが働きやすい環境とは?

もちろん、マーケターが働きやすい環境を構成する要素にも様々なものがあるため、これから話すポイントが必ずしも唯一の正解であるとは思っていないが、私が重要な要素であると思っていることを議論出来ればと思う。

では、どのような環境がマーケターが働きやすい環境なのであろうか?私は、

「マーケターがマーケティングのロジックでマーケティングを行うこと(正しいマーケティングを行うこと)に集中できる環境」

であると思っている。

これも、言われてみれば、当たり前のことを言っているように感じられるかもしれない。しかし、これまで見てきたたくさんのマーケティング組織の多くが、実はこの余りに当然と思われる事が出来ずに、マーケターがモチベーション高く仕事が出来なくなってしまっていたりする。おそらく、マーケターが一言でいうと「正しいマーケティング」が出来ない悪い例をお話しするとご理解いただけると思うので、具体的にイメージ出来るように説明してみよう。

マーケティング部門が正しいマーケティングを行えなくなる要因の代表例は下記のものが挙げられる。

  • 上位経営層、他部署からの意見
  • マーケティング責任者の知識不足
  • データ分析環境の不備

上位経営層、他部署からの意見

意見といえば聞こえは良いが、分かりやすく言うとマーケティングの知識がない外部からの口出しにより、やりたいマーケティングが出来ない状況であると理解してもらえればよいと思う。

データドリブンを阻害する要因の代表例において「誰が正しいパターン」として紹介したが、データ分析や、マーケティングのロジックとは全く関係ないどこかの「偉い人」が「俺はこう思う!」とそれっぽい主張をして、その意見に負けて、マーケティング部門が考える方針を貫けなくなる状況である。

また、ヒエラルキーの上下はないフラットな関係にある部門の意見であっても、例えば、ゲーム会社などで、豊富なヒットコンテンツの制作実績のある大物プロデューサーが作った商品のマーケティング施策の構築の段階において、マーケティングチームの意見が全く通らずに、プロデューサーの意見を優先しないとプロジェクトが進まない、社内コンセンサスが取れないなどの理由で、他部署の意見が優先されてしまうということが事例として想定される。

それなりの規模の組織であれば、当然組織内の意見の調整をすることも発生するため、常にマーケティング部門が自分たちのやりたい通りになんでもできるというわけではないが、このようなことが常態化、高頻度化しているようなマーケティング部門は、マーケターに取って働きやすい組織であるとは言い難い。

この状況を避ける最も良い方法は、マーケティング部門の責任者であるCMOやマーケティング部長のポジションを担う人物が、なるべく自部門の主張が社内で進められるような説明、調整を行い、自分が部下と考え、正しいと考えた内容を、会社全体の意見として集約する力を持つことが最も重要である。

そのためには、マーケティング部門が、他の部署から「あのチームは全員がプロフェッショナルで、素人が中途半端な意見をいって考えているようなことは当然部内で検討したうえでこの意見を言っている。だから一旦彼らの意見の通りにやってみよう。」と思ってもらえるような論理的な説明と、継続的な高パフォーマンスの実績を積み重ねることが不可欠である。

マネジメントメンバー教育はCMO・マーケ部門責任者の最も重要な仕事

私は常々、CMOの最も重要な役割のひとつは、マーケティング外の重要関係部署の責任者レイヤーにマーケティング部門が行っている活動や、短中長期の課題や、それに対応する世の中のマーケティングトレンドなどを素人でも分かるように説明し理解を得る、中長期的には教育していく努力を継続的に行うことであると思っている。

このような活動の結果、関係部署の責任者レイヤーの人たちが、自社の置かれているマーケティング状況や、パフォーマンスの良し悪しの背景にある原因、問題点などを正しく理解してくれるようになる。そうすると、日々の細かいマーケティング部門の意思決定に外部から細かく口出しされることもないし、もしされたとしても、ロジカルにディスカッションをして、双方が納得できる合意点を見つけることができるようになると考えている。

逆に、このような活動をマーケティング部門の責任者が怠っていると、細かいマーケティング的な意思決定事項の度に、背景情報をゼロから説明して理解を得なければいけないため、説明の準備段階に無意味な工数がかかったりする。

この状況のさらに悪いパターンとして、他部署への理解が浸透していない段階で、マーケティング部門のKPIの達成出が悪いなどパフォーマンスの低下が発生してしまった場合は、「ここが悪いのでは?」「こうしてみてはどうか?」などなど、素人の思い付きを、思いつくままに言われ、マーケティング部門としては正しいと思えない意見についても、部署のパフォーマンスが悪い負い目から、聞き入れざるを得ないという状況が多発したりする。

このようなシチュエーションが最悪な理由は、通常マーケティング部門のパフォーマンスが悪いだけでも部署のモチベーションレベルは低下しがちであるにも関わらず、それに追い打ちをかけるように部署外からの口出しが増え、その意見が取り入れられ、さらにパフォーマンスが悪くなるという負のスパイラルが永遠に続いてしまうようになるケースも少なくないことである。

このため、マーケティング部門の責任者はパフォーマンスが良い時こそ、何故現状が上手くいっており、将来的にどのようなリスクがあり、その対応として現状どのような仕込みをして対策の準備をしているのかというロジカルな説明を行っておくべきである。これにより、専門職であるマーケティング部門の業務に対して外部から非論理的な口出しをされ、マーケターのモチベーションが下がるような業務環境が醸成されてしまうことを防止できるのである。

マーケティング責任者の知識不足

マーケティング部門外からの口出しによるマーケティング業務環境の悪化は、マーケティング外との関係性の問題であったが、さらに深刻な問題が発生するのが、マーケティング部門の責任者にマーケティングの知識・経験が不足している場合である。これまで私のBlogを読んでくれている方であれば、ご理解いただけると思うが、初めて読む方からすれば、そんなことがあり得るのかと思われるかもしれない。しかし、様々な企業をこれまで見てきたが、結論から言うと実際には大半の日本企業において、マーケティング部門の責任者にその職責相応のマーケティングの知識と経験があることは非常に少ないのが現実である。なぜそうなるのかの理由はこちらをお読みいただければご理解いただけると思う。

基本的に、マーケティング能力のない人物がマーケティング部門の責任者になる企業というのは、そもそもマーケティングをプロフェッショナルなファンクションと認めておらず、誰でもちょっと勉強すれば出来るものだと思っているので、殆どの場合、マーケティング部門責任者の能力不足と部門外からの口出しは同時並行で発生する。

この状況が悲惨な理由は、マーケティング部門のスタッフは、まず部署内の承認をもらうために、素人責任者にプロフェッショナルな相手であれば必要ない基本的な事から事細かに説明して理解を得たうえで、本題であるマーケティングとしてのハイレベルな意思決定でも承認を得なければいけないという感じで、単純な手間が増える。さらに、その結果として得られる合意や、指示事項が的外れであったりすることも少なくないため、それを正しい方向に軌道修正して、説得するためにさらに無駄な手間が発生する。というように、プロフェッショナルな責任者がいれば簡単に済むはずの業務に数倍の時間を要することになる。

しかし、これは一つ目の関門を越えただけに過ぎず、次のステップとして、同じ作業を場合によってはもう一レイヤー上の階層のマネジメントに行わなければいけない。しかも、さんざん苦労して部門内で承認を出した部門責任者は所詮素人で、その人物自身は部門で出した結論の正しさを別の素人に説明して、説得できるほどの理解も出来ていないため、何か想定外の質問や意見を投げかけられると、反論も出来ずに折れてしまうということになりかねない。そもそも、知識も経験もない人物をマーケティング部門の責任者にしている時点で、その上位レイヤーのマネジメントはマーケ部門の責任者にプロフェッショナルとしての意見を期待していないので、酷いケースになると、「いいから俺の言うとおりにやれ」とか言われて、反論も出来ずにその通りにやらなければいけなくなってしまう。

ここでの事例は、相当悲惨なケースを想定しているが、程度の差こそあれ、似たような状況に置かれているマーケティング部門は日本企業の中で多くの人が想像しているよりも多いのが現実である。

逆に言えば、プロフェッショナルなCMOがいて、社内できちんとした発言力を持っているような企業のマーケティング部門というのは、実はそれだけで魅力的であったりするとも言えるのである。

データ分析環境の不備

実はマーケティングの経験と知識がマーケティング部門の責任者に十分無かったとしても、ひとつだけ補完可能なソリューションがある。それは、徹底的なデータ分析の結果に基づいて、簡単には反論出来ないようなロジックを組み上げてしまい、そのロジックを武器に部門外の関係者を説得するという方法である。

この方法であれば、マーケティングの経験が無くても、データを論理的に分析、理解できる能力のある人材であればある程度上手く立ち回ることが出来る可能性がある。

但し、これを実現するためには、絶対的な条件がある。それはきちんとしたデータ分析を行えるだけの環境とその分析作業を行える能力のある分析チームがいることが必要である。これも物凄く当然なことをいっているように聞こえるかもしれないが、多くの企業がこの基本中の基本とも思える当然の環境を実現しているかといえば、Noと言わざるを得ない。納得いかず、未読な方は是非こちらをご一読いただきたい。使える情報が、過不足なく、使える状態で整備されていることの重要性がご理解いただけると思う。

マーケティング部門に十分なデータ分析環境がない場合の問題点として、よくある例は、社内のバリューチェーンの状況がデータとして集約、分析がされていないことで、そもそもマーケティング活動の効果検証が出来ておらず、PDCAが回り難い状況になってしまっていることである。このような状況になると、そもそもマーケティング部門の活動自体がロジカルでなくなるため、部門外の説得や、せめてデータのロジックでマーケティング活動の良し悪しを判断したいと考えている頭は良いがマーケティング知識のないCMOの理解促進のハードルも高くなってしまうのである。

 一言で行ってしまえばデータドリブンでなくなってしまうわけであるが、このような環境に置かれているマーケティング部門というのは往々にして、社内でのポジションが確立されておらず、発言力も弱いため、現場にいるマーケターも高いモチベーションで仕事をすることが難しくなるわけである。

普通に正しいマーケティング部門を作るだけでも日本では差別化要因

日本企業のマーケティングの実情を知らない方や、逆にイケてないマーケティング部門しか見ておらず、マーケティングってあんなものと思っている経営者の方からすると、結構驚かれるかもしれないが、多くの日本企業のマーケティング部門の実態はこのような感じである。

ということは、ここで述べた3つのある種当然と思えるようなことに本気で取り組み、改善することをマーケティング部門の責任者が行うことが出来れば、自分の部署がマーケターにとって十分に魅力的な職場であると自信を持って言えるということである。

マーケティング部署のマーケティング

マーケティング組織をマーケターにとって働きやすい職場にするために、マーケティング部門の責任者が取り組み可能なポイントをここまでで説明してきたが、次のステップとして、自社のマーケティング組織が魅力的な職場であることを外部にどのように伝えるのかという点も簡単に考えてみよう。つまりマーケティング部署のマーケティング戦略を考えるということである。簡単に言えば、自部署のポジショニングを明確にして、その内容を外部にどうやってコミュニケーションしていくのかということである。具体的には以下の3点について考える。

  • 自社のマーケ組織の差別化ポイントを明確にする
  • 外部に自部署の先進的な成果を積極的に発信する
  • 面接の場での受験者への印象を良くする

自社のマーケ組織の差別化ポイントを明確にする

マーケティング戦略の基本中の基本であるが、採用について本気で考え、自分がマネジメントするマーケティング組織を世の中に数多あるマーケティング組織との相対的な比較の中でどのように位置づけ、どのように差別化していくのかを真剣に考えている人がどのくらいいるであろうか?私自身も元々その様なことを真剣に考えていたわけではないが、良い人材を自部署に確保するために、多くの面接を行い、一緒に仕事をしたいと思った人材に自社を選んでもらうことを真剣に考える過程で、自分がマネジメントしている組織をどのように見せるべきか、何を売りにするべきかということを自然と深く考えるようになった。

例えばこんな感じである

  • 自分の自己紹介 →プロフェッショナルなCMOがマネジメントをしているマーケ組織であること
  • マーケティングの規模など言える範囲で →予算規模があるから出来ることがある
  • 先進的なマーケティング事例 →知識があれば、こんなことまで考えてやっていると分かってもらえるような最新の事例
  • メンバーの質 →一緒に働くメンバーのスキルも高く切磋琢磨できる環境であること
  • 外部リレーション →予算規模が大きいから得られる代理店やメディア企業との特別なリレーションから得られる最新の情報と手厚いサポート
  • データ分析環境 →本当のデジタルマーケティングが出来る業務基盤が整っていること

このくらいの話をして、自分たちの部署が今働いている企業、今受けている併願企業と比較して、どのくらい良い環境であるかというのを説明するようにしている。この内容を纏めること自体はそれ程難しい事ではないが、魅力ある内容にまとめあげるためには、当然自分の組織の実態を差別化できるように育成・強化するという中長期的な取り組みが必要である。

よく人材採用が上手くいかないと、給与水準に問題があるとか、前回述べた企業としての採用ポテンシャルを原因として言い訳する人を多く見かけるが、私としてはそれ以前に今回述べたような自部署の本質的な改善を行い、その結果として、魅力的な職場として外部にアピール出来るようにすることをすることの方が、優先順位が高いと思っている。

外部に自部署の先進的な成果を積極的に発信する

外部にアピール出来るような先進的なマーケティング活動を行えるように自組織がなったら、その成果を積極的に外部にアピール出来るようにすることも必要だと思う。よく他部署から、その様な情報を外部に出したらノウハウが外部に流出するのではないかと心配の声が挙がったりするが、私の立場からすれば、具体的なKPIの絶対数など営業機密に当たるような数字を出したり、業務マニュアル的な詳細な資料を丸々外部に提供するような事をしなければ、ノウハウが流出するというような事態にはならない。

そもそも、デジタルマーケティングというのは、何をやるかではなく、それをどれだけ精度高くやるかというオペレーション精度の勝負であることが多いので、そもそも何をやったかが外部にばれたくらいで自社の競争優位性がなくなるレベルのマーケティングオペレーションは、差別化と呼べるほどのノウハウとは言えないというのが私の見解である。分かりやすく言えば、「マネできるものならどうぞマネしてください。マネできたころには私たちはもっと先に行っているので。」という感じである。

ということで、中途半端に情報を隠してイケてないマーケ組織だと誤解されるくらいあれば、自組織を良い職場としてアピールするために、自部署の成果は積極的に外部に展開していくべきであると考えている。

具体的には、社外の勉強会等での事例発表、カンファレンス等への登壇、専門誌の取材、大手メディアの成功事例への積極的な協力などである。

個人的には、外部へのアピール材料として、大手メディアの先進事例として紹介されることなどは、分かりやすくイケてるマーケティングチームをアピールする良い媒体であると思っている。

この辺も、会社によっては社内理解を得る必要があるので、マーケティング部門の責任者は自組織マーケティングの手段として中長期視点で取り組むべき課題である。

面接の場での受験者への印象を良くする

私がもう一つ重要視しているのは、個々の面接において受験者向けに、魅力的なマーケティング組織であることを伝えるということである。これはもちろん、採用したい応募者向けには当然であるが、実は不合格にする受験者に対しても手を抜かずに行うことが重要であると思っている。

理由は、人材紹介会社の営業、キャリアアドバイザー向けに、あの会社のマーケティング組織は先進的な環境で、良いマーケターに魅力的な職場であるという事実を伝えることは重要であるからである。そして、その伝達のためには採用企業の人事部門が紹介会社の営業に1人称で話すよりも、合格不合格に関わらず、受験者からキャリアアドバイザーに伝えてもらう方が伝わりやすいからである。

これは人材紹介会社という逆の立場で仕事をしたから分かったのであるが、出来るキャリアアドバイザーであれば、紹介した人材に合否に関わらず面接した会社の感想はヒアリングするものであるし、その感想を通してそれぞれの会社の評判を肌感覚として把握するものである。ハッキリ言って採用Webサイトにどのように説明されているかとか、募集要項にどのように書いてあるかよりもよほど重要な生の声である。

私の部署の採用は、殆どの場合、10-20人に一人程度しか内定を出さないし、正直内定を出してお断りされることは少ないため、実は自部署のマーケティングという観点でいえば、圧倒的に人数の多い不合格者経由での情報拡散量の方が数倍のインパクトがある。このため、例え不合格を出すと内心決めていたとしても、丁寧な対応をして、自部署の魅力を伝えておくことは重要であると考えている。

結果として、すべてその様に上手くかは分からないが、不合格になった人が、「あの会社のマーケティング部門は非常にレベルが高いことはよくわかった。今の自分のスキルでは不合格になっても仕方がない。」と思ってもらい、キャリアアドバイザーにその様に伝えてもらえれば、キャリアアドバイザーにもその様な情報は伝わるし、紹介してくる人材の質も上がってくるし、次に紹介する人に、あの会社のマーケ部門は評判が良いという話もしてもらえるであろう。

以前にブランド戦略のパートでも話したが、ブランドポジショニングというのは、実態の反映であって、実態とかけ離れた脚色をしても意味がない。このため、マーケティング組織マーケティングにおいても、一番重要なのはその前に説明したマーケティング組織自体を本質的に魅力的な組織にすることである。しかし、それだけでは、自分の組織が良い組織であることは外部には伝わらない。それをどのように伝えるのかというのが重要である。是非、魅力的なマーケティング部門が作れたら、ネクストステップとして考えていただければと思う。

良い人材を集めるのに近道はない

ここまで述べてきたように、良い人材の採用には、良い職場づくりからという、ある意味当然のことを全うにやることの重要性はご理解いただけたと思う。

私はひとつのマーケティング組織を引き受けた時にある程度自信をもって良いチームにするには3年程度(国内限定、海外組織込みなら5年以上)の時間が必要だと思っているが、その背景にあるのは、結局どんなにお金を積んで、経験がありそうな人材を雇ったとしても、それが組織として血肉となり、次世代の人材を育成するサイクルを作るまでにはそのくらいの期間は必要だと考えているからである。

残念ながら日本にはスキルの高い、良いマーケターの人材プールが乏しいため、自部署のスキルが上がるほど、外部から良い人材の採用が難しくなる傾向があり、採用については、何時まで経っても楽になるということがないのがマーケティング組織の現実である。このため、これまでの4回で説明してきたマーケターの採用については、マーケティング同様に、常にPDCAを回してブラッシュアップしていく必要があるのである。