いつからか増えだしたOne on Oneが嫌いな理由
何時からOne on Oneというミーティング形態がマネジメントの中で重要視されてきたのだろうか?もちろん昔から、面談とか個別ミーティングみたいな上司と部下、先輩と後輩が1対1で行う会議を表す会議は存在したが、なんかこの5年くらいOne on Oneという英語の言葉が職場で日常的に聞こえ始めたり、面接とかで実践しているマネジメントやオペレーション管理の手法を質問すると、こまめにOne on Oneをしていますといえば、気を使ってやっていると聞こえるのだ思っていそうな回答をするひとが増えてきた。なんとなく、システム開発系の人に多い気がするのでシリコンバーレー界隈のマネジメントの手法から流行りだしたやり方なのだろうか?それとも、コロナ禍でリモートワークが増えたことで、日常的にコミュニケーションが出来ないことの代替手段として出てきた手法なのであろうか?
この3年くらいいろいろ試してみたが、私は手法として好きではない。特に上司部下の関係でのOne on Oneみたいな話は、個別で案件がある場合と、多くても四半期に1回程度の個別面談で十分であると思う。それ以上の頻度で行うのは時間の効率が良くないと思っている。
この話をすると、そもそも部署のマネジメントをするのに、どのような会議体が良いかという議論から始めないといけない。よく上司と二人で話して合意を取ってくるのを得意にしている管理職やマネジメントがいるが、私はそもそも、上司と二人で何かをコソコソと密室で決めることが嫌いである。別に悪いことをしているわけでもないのに、周りの人に不必要な憶測を生むし、そもそも部下が何週間もかけて作った提案の結論を、同席していない密室での上同士の話し合いで決められ、嘘かほんとかわからない理由をそれっぽく聞かされても、何の納得感もないと思うからである。
私は、これまで何人もの上司を持ってきたが、定例的に上司と二人で話す機会を自分から依頼して設定したことは記憶の限り、一度もないと思う。自分でしたいと思わないので、自分の部下とも一人部署のような特殊な状況でない限り個別のMTGを定期的に行うことは基本的に自分からしないようにしていた。
現場メンバーとの定例MTGで組織と事業の実態を把握する
参考までに、自分の部署のマネジメントをするときに、私が実行している会議体の仕組を紹介しておく。私は自部署を基本ファンクション別組織にするので、ファンクションごとの定例MTGを週次~隔週くらい頻度で行って報告を聞くことにしている。その際の参加者は最低自分の配下2レイヤー下のメンバーをいれ、そのメンバーから直接報告してもらうように心がけている。定例MTGを重視する最も大きな理由は、以前述べたように、同じフォーマットの報告を繰り返し聞くことで、微妙な変化や時系列の理解を深めることが可能になるからである。そして、もう一つの理由は、直下の管理職ではなく、2レイヤー下の現場のメンバーからの報告を聞くことによって、各チーム内で起こっている問題点や課題を直接理解することができるからである。
この視点から、One on Oneの弊害を考えると、後者の機能を果たす場が、2レイヤー下のメンバー全員とOne on Oneをするという方法以外なさそうで、それを真面目に実施しようと思うと、例えばひとつのファンクションチームのメンバーが5人だとすれば5倍、10人だとすれば10倍の時間がかかるが、全く持って非効率だと思うからだ。
以前、ある部門の責任者とのOne on Oneを重視して、その部下をハブにその部署の状況を理解しようとして大失敗したことがあった。部署の状況の報告内容に、その直下の部下のフィルターがかかってしまっていて、その部署での問題が相当深刻になるまで表面化しない状況になってしまった。また、その時判明したのは、私の指示や考えもその部下のフィルターを通ったものしか伝わっていないという状況になっていた。
モチベーションが低いのはOne on Oneの有無ではない
よくOne on Oneの効用を部下のモチベーション管理と退職防止みたいに書いている文章をよく読むが、これまで、多くのマネジメントを見てきたが、トップレイヤーのマネジメントがOne on Oneを多用する組織において、現場のモチベーションが高い会社を殆ど見たことがない。そのような会社で必ず聞くのが、偉い人たちは現場のことが分かっていないという不満である。大抵、そいういう組織のOne on Oneで話されているのは、その部下たちのパフォーマンスが低いという話なのであるが。
ちなみに、私は自分の部署で、近年の異常なエンジニア不足でエンジニアの退職に苦しんだ経験はあるが、いわゆるマーケティング職の組織での人員の離職率はおそら年間で1-2%の間くらいではないかと思う。ちょっとWEBで検索すると日本企業の平均離職率は10-15%の間くらいのようなので、別にOne on Oneを多用しなくても、そこまでモチベーションが下がるということはない気がする。
管理職の仕事は管理ではなく専門分野のプロフェッショナルのリーダー
Middle Managementのことを日本語で中間管理職とか単純に管理職というが、なんか管理が仕事のようなネーミングで私は全く好きではない。ちなみに、私は、1浪大学院卒なので、25歳で社会人になり、28歳で管理職になってしまった。しかもマーケティングをゼロから始めたのと、管理職になったのが同時であったので、もし管理職の仕事が管理なのであれば、そもそも自分でマーケティングは1秒もしていないことになる。前に、人材マネジメントの研究者の人の話を見ていてびっくりしたのだが、結構多くの日本の大企業というのは、課長から部長になれる確率が10-20%くらいで、殆どの管理職というのは40代から20年間くらい課長であり続けるらしい。そして、40代半ば以降急速にパフォーマンスが落ちる傾向にあるそうだ。その理由は、おそらく、Middle Managementになったときに、中間管理職という間違ったManagementの略語に騙され、日本の企業の社内調整とか根回しとか、会議資料作りとか、そして、最近流行りのOne on Oneとかいう管理の仕事に時間を使いすぎているからだと思う。私は、Managementというのは、組織全体で部下と一緒に自己の専門分野の業務をよりクオリティの高いものへと押し上げる先導役でなければいけないと思っている。そのためには、効率の悪い管理の時間は極力減らさなければならない。私は、その効率の悪い代表例みたいな話が、One on One神話なのではないかと思ってしまう。もちろん、私のように下手な使い方ではなく、One on Oneを大変有効に使うメソッドもあるのかもしれない。それでも私は、管理ではなく、チームの皆と一緒にマーケティングがしたいのである。